07.22.06
『ネクスト・マーケット』営業
ネクスト・マーケット
「貧困層」を「市場」に変える次世代ビジネス戦略
C・K・プラハラード著、スカイライトコンサルティング訳、2005年
A5判上製 本文480頁 本体2,800円+税
〈経営戦略・グローバル経済〉
美嘉 こんにちは! 美嘉です。本のご紹介にまいりました。
店長 なんだね君は。大学生? アルバイトか。
美嘉 そうです。美嘉と申します。
店長 わしはこの明治以来の老舗・中島堂の店長、中島だ。神奈川県は逗子の生まれ、今年で60歳になる。わしも君くらいの女学生と仲良くキャンパスを闊歩した頃があったものだ。早稲田の大隈講堂前は今もあの頃のままだろうか……。
美嘉 それは存じ上げておりません……。本のご紹介をしても宜しいでしょうか?
店長 もちろん。ここは書店だ、本の話をしないでどうする。わしもほら、本を読んでいたところだよ。
美嘉 ありがとうございます(暇なのね……)。何を読んでいたんですか?
店長 スティーヴン・ヴォーゲル著『新・日本の時代』だ。あの名著『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者エズラ・ヴォーゲルの息子の本だよ。
美嘉 へえ。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』って、大学の講義でも聴いたなあ。親子とも研究者なんて、すごいですよね。
店長 まあ、わしの家は祖父の代から本屋さんだがね! しかしこの本、難しいわい。グローバル化がどうの、構造改革がどうの、とね。
美嘉 ちょうど良かった、今日は「グローバル経済の未来を解き明かす一冊」と評判の本を持ってきました。C・K・プラハラードの『ネクスト・マーケット』です。
店長 ネクスト・マーケット! 何とまた大袈裟なタイトルだな。
美嘉 いやもう、それだけ強烈な本なんですよ。グローバル経済の中で生まれてきた、「今後の巨大市場」について書いている本ですから。
店長 グローバル化、国際競争、そんなものはもう聞き飽きたわい。そもそも、なぜ、そんなことが起こるんじゃ。
美嘉 うう。そうね、冷戦の終結が大きな原因なのかなあ。自由な貿易を推進するアメリカやイギリスなどの資本主義国と、国が経済を統制することを望むソ連や中国などの社会主義国の対立=冷戦は、ソ連の経済が崩壊し、中国も?小平の「改革・開放」路線に方向転換して、1990年代初めに終わりました。それで、自由に貿易できる範囲が広がって、どんどんグローバル化が進んできたんです。
店長 なるほど。しかし、自由貿易派が勝って、社会主義派が負けたのは、どうしてだ?
美嘉 うう。自由な取引をした方が、効率的だし、便利だからじゃないですか?
店長 なんだ、その曖昧な答えは! わしに曖昧さは通用せんぞ!
美嘉 す、すみません……。たとえば、国によって原材料や人件費のコストは違いますよね。鉄をつくるとき、オーストラリアは自国に原料があるけど、日本は輸入しないといけないからコストが高い、とか。日本で生産するより中国で生産した方が人件費は安上がり。それでユニクロは中国で服を作るんでしょ。安く作れれば効率的だし便利です。それに、同じ100万円の資金でも、日本より中国で作った方がたくさん作れる。だから、自由な取引ができた方が、経済は発展するの。
店長 安い給料で途上国の人を働かせる。なんだか植民地化と似ているぞ。それで南北問題がエスカレートして、貧富の差が広がっていくんじゃないか。知ってるか? いま世界には、1日2ドル未満の所得で暮らしている人が40億人もいるんだぞ。
美嘉 そうそう! この『ネクスト・マーケット』のテーマも、まさにそれなんです。この本は、その「貧困層」が今後「世界最大の市場」になる、と言っているの。
店長 はは。貧困層は1日2ドル未満しか使えないんだぞ。どうやってビジネスが成り立つんだね。
美嘉 と思うでしょ? でも、所得が低くても、物の値段が安ければ買い物はできますよね。たとえば、シャンプーの「TSUBAKI」をボトルで買うのは難しいかもしれないけど、試供品みたいな1回分の使い切りパックで売っていれば、買えるかもしれない。それを1回買って使ってみて心地良かったら、また買うでしょう。単価は安くても、買う回数が多ければ、魅力的な市場になりませんか?
店長 日本の女性は美しい、というやつだな。確かに、単価が安くても数が多けりゃビジネスにはなる。500円の文庫本でも名作は長く売れてくれるからなあ。
美嘉 1日2ドル未満で生活する貧困層は世界に40〜50億人。日本の人口が1億3千万人未満ですよ。切り売りでも、貧困層に広く普及させることができれば、莫大な売上になるじゃないですか!
店長 おお。そうだな。単純な掛け算だが、確かにそうだ。
美嘉 しかも、この貧困層の市場というのは、これまで多くの企業が「ビジネスにならない」と思って見向きしてこなかったんですね。つまり、まだ競争が少ない「ブルー・オーシャン」なんです。
店長 あのベストセラー『ブルー・オーシャン戦略』を地で行くような内容ってことか。
美嘉 それ以上のインパクトがありますね。世界経済を揺るがすような内容ですから。
店長 世界経済の新たな潮流と言えば、BRICs関連本が最近多いなあ。ブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、中国(C)の経済成長はすごいらしい。中国やインドの話はよく聞くが、この『ネクスト・マーケット』はBRICsとも関連するのかね?
美嘉 そうですね、「これからはBRICsの時代だ」というのは、投資銀行ゴールドマン・サックスが言い始めたことですが、基本的には、一部の好調な産業と、一握りの高学歴者や富裕層に注目した見方ですね。貧困層をビジネスの対象として位置づける点で、本書はまったく新しいです。所得階層の底辺を「ボトム・オブ・ザ・ピラミッド」(BOP)と呼び、「これからはBOPの時代だ」と言っています。
店長 ううむ。BRICsの次は「BOP」か。そんな動きは現実に起きているのかね?
美嘉 着々と進んでいます。著者のC・K・プラハラードさんは、10年間もインドなどで取材を重ね、貧困層を対象にしたビジネスの具体的な成功事例を幾つも見てきたんです。本書にも、そのケーススタディーがたくさん載っていますよ。
店長 10年を費やすとは、なかなか忍耐強い御仁だな。プラハラード氏というのは有名な人なのかね。
美嘉 1990年代のベストセラー『コア・コンピタンス経営』を書いた有名な教授です。インド系のアメリカ人だから、このテーマについての思い入れは強いでしょうね。渾身の力作です。
店長 売れ行きはどう?
美嘉 アメリカではアマゾン・ドットコムの編集者投票で2004年の「最も重要なビジネス書」に選ばれた話題作。世界各国で翻訳出版され話題になっています。日本版の『ネクスト・マーケット』も、週刊ダイヤモンドの2005年「ベスト経済書」に選出されましたし、大前研一さんはじめ多くの人が推薦しています。企業内の研修や勉強会、大学の授業やゼミなどにも使われていますよ。
店長 ほう。大前研一と言えば、ビジネスマンなら誰もが知っている有名人だ。
美嘉 大前さんによれば、本書は、既存の常識にとらわれずに、まったく新しい発想でビジネスを切り開く視点を示す画期的な本。大前さんの訳書『ハイ・コンセプト』でも紹介されています。実際、半ば見捨てられていたような貧困層を「世界最大の市場になる」と主張する本だから、インパクトの大きさが分かるでしょ。
店長 うむ。それに、夢のある話だ。
美嘉 現実の動きもすごいですよ。ある会社が低機能・低価格の携帯電話をアフリカで売り出したら、どんどん普及しています。情報の流れが速くなって、ビジネスのスピードも上がるし、周辺産業も生まれるしね。最近では、電気の通わない所でもゼンマイで動く、激安パソコン「100ドルPC」の開発も進められているのよ。
店長 しかし、海外の事例ばかりだな。日本企業は何しとる?
美嘉 日本の企業も、徐々にBOPに進出し始めていますよ。たとえば、トヨタは価格80万円以下の自動車を開発して、2010年にインド市場に投入するそうです。
店長 さすが世界のトヨタだ。貧困問題の解決にもつながるかもしれんな。ビジネスが広がれば、人々の所得は増える。
美嘉 そう。プラハラードはそこまで考えて、「企業よ、BOPに目を向けろ」と言っているのね。発展途上国を「安い労働力」として見るだけだった時代は終わり、「魅力的な市場」として捉える時代になる。
店長 まさに常識を覆す本じゃな。
美嘉 「貧困層はブランドが好き」とか、意外な発見もあるしね。
店長 日本の企業にとっては、国内の市場がもう飽和状態になっている今、BOPという新しい市場に目を向けることは、大企業でも中小企業でも必要なことだろうな。
美嘉 そう。企業は、新しい視点でビジネスをする必要があるのよ。
店長 うむ。斬新な発想、壮大なスケール、具体的事例、貧困撲滅の理想と情熱。良い本だ! 50冊注文!
美嘉 ありがとうございます!
関連書籍
◆経済・ビジネスの新潮流を読み解く本
『ブルー・オーシャン戦略』W・チャン・キム著、有賀裕子訳、ランダムハウス講談社、2005年
『ハイ・コンセプト』ダニエル・ピンク著、大前研一訳、三笠書房、2006年
『フラット化する世界』トーマス・フリードマン著、伏見威蕃訳、日本経済新聞社、2006年
『ロウアーミドルの衝撃』大前研一著、講談社、2006年
『BRICs新興する大国と日本』門倉貴史著、平凡社新書、2006年
◆貧困問題・開発途上国経済
『貧困の克服』アマルティア・セン著、大石りら訳、集英社新書、2001年
『世界の貧困』ジェレミー・シーブルック著、渡辺景子訳、青土社、2005年

本から摂ろう!!人生のサプリメント Said:
8月 14, 2006 at 5:58:42
「遊ぶ奴ほどよくデキる」大前研一 …
人生をバラ色に変えるオフの極意、大前研一 著「遊ぶ奴ほどよくデキる」の記事を書き (more…)