偉大なリーダーはなぜ決断の「内容」よりも「プロセス」にこだわるのか?――キューバ危機を回避したジョン・F・ケネディ大統領に学ぶ

決断の“内容”は本質ではない?

 

「あの時、違った決断をしていれば…!」

過去を振り返ると、後悔のシーンが思い浮かぶという方…いらっしゃるのではないでしょうか?そして同じ失敗を繰り返さないよう、多くの人はそのシーンを反省することと思います。

さて、みなさんはどんな反省をしますか?

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「Aという判断をすべきではなく、
Bという判断をすべきだった!」

『決断の本質――プロセス思考の意思決定マネジメント』(著:マイケル・A・ロベルト)では、このような反省を「内容中心の学習」と呼んでいます。そして、

偉大なリーダーの決断の本質は
ここにはない

 

といいます。

意思決定の結果が失敗したとき、リーダーの多くは問題そのものに目を向け、判断の誤りや前提条件の欠陥を探そうとする。しかしさらに一歩踏み込んで、なぜ過ちを犯したのかを見つけ出そうとするリーダーは多くない。 「内容中心の学習」に終始する人があまりに多すぎるのだ。(本書より)

このような反省は、次にまた同じような状況に陥った時には有効かもしれません。しかし、そもそも誤った決断に陥った原因…決断の「内容」ではなく「プロセス」を見直すことができれば、もっと多くのシチュエーションにおける正しい決断を行えるようになるのではないでしょうか?

ジョン・F・ケネディはまさに決断の「プロセス」を修正した人物でした。

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ジョン・F・ケネディ(第35代アメリカ合衆国大統領)

 

 

ケネディの失態:ピッグス湾事件

 

1961年、アメリカへ亡命していたキューバ人部隊「反革命傭兵軍」は、祖国キューバのフィデル・カストロ革命政権の転覆を狙っていました。同年4月、ジョン・F・ケネディ大統領は反革命傭兵軍によるキューバ・ピッグス湾への侵攻を米国政府として支援する決断をします。しかし、反乱部隊はキューバの海岸に上陸してから三日後、そのほとんど全員がカストロの軍隊に殺害されるか、捕虜となる結果となりました。

この侵攻は、人命の損失という点でも、新任大統領の政治的失態という点でも、まったくの大惨事であり、世界各国はケネディ政権の行為を非難した。侵攻を支持するという決断が最悪の結果になったことに気づいた大統領は、アドバイザーに「連中にGOサインを出すなんて、私も馬鹿なことをしたものだ」と漏らした。(本書より)

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ケネディ大統領の意思決定プロセスには、様々な欠陥がありました。

■侵攻の提唱者たちは自分たちの計画の弱点やリスクが明らかになるのを恐れて、国務省の中堅職員を討議から外した。

■公平な立場の専門家に助言を求めることをしなかった。

■反対意見や論争がないまま、重要な前提条件の多くが見過ごされた。

侵攻が失敗に終わった後、ケネディ大統領はこの事件における意思決定プロセスを見直し、重要な改善を行います。そして、1962年10月にソ連がキューバに核ミサイルを配置した(キューバ危機)ことを知ったケネディは、アドバイザーたちを招集して対策を協議する際、この改善後のプロセスを用いるのです。

具体的に、どのような改善が行われたのでしょうか?

 

 

重視した決断の“プロセス” 

 

改善点①

会議中は通常の手続きに関する規則や序列を忘れるようにグループに指示

 

改善点②

自分よりも専門知識を持つと思われる人との議論を避けるような官僚的発想をやめるよう指示

 

改善点③

中堅職員や部外の専門家を検討の場に招き、偏見のない情報を得られるようにする

 

改善点④:小グループに二つの行動方針案を作成させ、互いの提案に対して詳細な批判文書を作成させた

 

改善点⑤:大統領の腹心二人に「悪魔の代弁者(わざと異論を唱える人)」の役割を与え、提案のリスクや弱点を徹底的に分析させた

 

改善点⑥:大統領はわざと何回かの会議に出席せず、出席者に率直で奇譚のない意見を述べさせた

 

ピッグス湾事件に対して、単に「あの時ああ決断しておけばよかった」と決断の“結果”を反省しただけではないことが、これらの改善策から分かると思います。核戦争が起き、第三次世界対戦が勃発すると恐れられていたキューバ危機が解決された裏には、ケネディ大統領のこのような決断“プロセス”の改善があったのでした。

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本書『決断の本質――プロセス思考の意思決定マネジメント』では、意思決定のプロセスの「4C(①Composition:メンバー構成、②Context:背景、③Communication:コミュニケーション、④Control:コントロール)」の解説を始め、建設的な対立と適切なコンセンサスを共存させる方法が説かれています。

先日1月19日に富士通の社長人事が発表されました。次期代表取締役に就任される田中達也氏は、記者会見における「愛読書は?」の質問に本書を挙げてくださり、「名著だと思っている」と言ってくださいました。おかげさまで、一時期在庫を切らしてしまったほどの大反響を呼んでいます。

「内容中心の学習」を離れ、「正しい決断」よりも「正しく決断」する方法を学ぶ一助になると思います!

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『決断の本質――プロセス思考の意思決定マネジメント』

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