3月11日に向けて③――支援を受ける人に、「気まずい」思いをさせていないか。

親切の「つもり」

 

突然ですが、人からこんな風に聞かれたとき、あなたはどう答えますか?

「明治通りには、どのように行けばいいですか?」

明治通りの場所を知っているあなたは、こう答えるかもしれません。

「このまま真っすぐ進んで、2つ目の角を左に曲がってください」

一見、とても親切な受け答えに思えます。
しかし、これは本当の意味で相手に役立つ答え方でしょうか?

もし明治通りへの行き方を伝える代わりに、こんな風に問いかけていたらどうでしょう?

「目的地はどこですか?」

その人が明治通りを目指していたのは、目的地へ行くための単なる目安だった可能性があります。
その目的地によっては、もしかしたらこんな風に答えることが最も親切かもしれません。

「そこに行かれるのでしたら、この道を戻っていただいて3つ目の角で右に曲がると早いですよ」

 

 

上司と部下、コンサルタントとクライアント、家族関係、ちょっとした人間関係…
「支援」は、生活上の様々な場面で現れるテーマです。

3月11日を前にして、「被災地の支援のあり方」について考えられている方も多いかと思います。
このタイミングでいま一度、

「親切のつもり」で終わらず、「本当に相手の役に立つ支援」をするために大切なこととは?

を考えてみたいと思います。

 

今回参考にするのは、組織心理学の大家であるエドガー・H・シャイン教授の著書『人を助けるとはどういうことか――本当の「協力関係」をつくる7つの原則』です。

 

 

支援を受ける人は「気まずい」

 

シャイン教授によると、「支援」が行われる状況において、「支援をする人」と「支援を受ける人」の関係は不釣り合いになるそうです。

支援をする人
知恵や専門知識に頼られ、地位と権力を得ることで、「一段高い位置(ワンアップ)」にいる。

支援を受ける人
「すべきことができない」という自信を失った状態におり、誰かに依存する状態を認めたくない、時には恥辱を感じることすらある、「一段低い位置(ワンダウン)」にいる。

支援のプロセスで物事がうまくいかなくなる原因の多くは、両者間のこの力の不均衡にあります。
もしもこれを認めずに、しっかりと対処をしなかったらどうなるでしょう?

「支援を受ける人」は、この力の格差をなくすために、「支援をする人」を無能に見せて立場を下げようと行動してしまうかもしれません。
たとえば、相手からの助言に対して「そんなことはもうとっくに考えたことがあり、取るに足らないものだ」と見くびるようになる可能性があります。
あるいは「支援をする人」は、過剰な自信から時期尚早なアドバイスをしてしまい、相手の中にある真の問題を探り出す機会を失ってしまうかもしれません。

では、これらのことを踏まえた上で有効な支援関係を成立させるために、どんなことに注意すればよいでしょうか?

本書に収録されている「支援関係における7つの原則」の一つに、「支援関係が公平なものだと見なされたとき、効果的な支援が生まれる」というものがあります。
「支援をする人」「支援を受ける人」の双方が大切にすべきこととして、そこにはこんなことが書かれています。

支援をする人
支援を求める人は気まずい思いをしているということを思い出そう。だからクライアント(支援を受ける人)の本当の望みは何か、どうすれば最高の支援ができるかを必ず尋ねること。

支援を受ける人
何が役に立ち、何が役に立たないかというフィードバックを支援者(支援をする人)に与える機会を探そう。

このちょっとした心がけで、ワンアップ・ワンダウンの力関係を正し、効果的な支援関係が生まれるかもしれません。

 

以下は7つの原則の一覧です。
よりよい支援を築くために、ぜひ参考にしてください。

原則1:与える側も受け入れる側も用意ができているとき、効果的な支援が生じる。

原則2:支援関係が公平なものだと見なされたとき、効果的な支援が生まれる。

原則3:支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる。

原則4:あなたの言動のすべてが、人間関係の将来を決定づける介入である。

原則5:効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる。

原則6:問題を抱えている当事者はクライアントである。

原則7:すべての答えを得ることはできない。

書籍の中では、各原則に沿って行動するための具体的なコツも書かれています。

 

 

まずは目の前の人から

 

冒頭にも書かせていただいた通り、「支援」は人と関わる限り日常のあらゆる場面で考える必要があるテーマです。

人を助けるとはどういうことか』は、被災地の支援に携わっている方はもちろん、本当に役に立ちたい相手がいるすべての方のための1冊です。

大きなことを考えることも大切ですが、まずは身近な人間関係から、自分の目の前の人が本当に必要としている支援とは何か、改めて考えてみるのはどうでしょう?

そしてもし、

「自分のことで精一杯の中で、『人を助ける』なんて考えている余裕はない!」

と思ってしまっている方がいれば、この本が支え合うことの大切さに触れる機会になれば幸いです。

人を助けるとはどういうことか_表紙

人を助けるとはどういうことか――本当の「協力関係」をつくる7つの原則
著:エドガー・H・シャイン

※オーディオブックも発売しました!
http://www.febe.jp/product/233305

エドガー・H・シャイン Edgar H. Schein
1928年生まれ。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院名誉教授。シカゴ大学卒業後、スタンフォード大学で心理学の修士号、ハーバード大学で社会心理学の博士号を取得。1956年よりMITスローン経営大学院で教鞭をとり1964年に組織心理学の教授に就任。1972年から1982年まで組織研究グループの学科長を務めた。2006年に退官し名誉教授となる。組織文化、組織開発、プロセス・コンサルテーション、キャリア・ダイナミクスに関するコンサルティングを行い、アップル、P&G、ヒューレット・パッカード、シンガポール経済開発庁など多数の企業・公的機関をクライアントとしてきた。『キャリア・アンカー』(白桃書房、2003年)、『企業文化』(同、2004年)、『プロセス・コンサルテーション』(同、2012年)、『問いかける技術』(英治出版、2014年)など著書多数。

 


 

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