『僕らはソマリアギャングと夢を語る』がつくられた経緯とは? 「編集者と語り合う夕べ」の第1回が開催されました!

先週6日(水)に開催されたイベント「編集者と語り合う夕べ」。その記念すべき第1回のゲストとして、『僕らはソマリアギャングと夢を語る』の編集を担当した英治出版の下田を招いて、開催していただきました。

 

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イベントの主催と進行は、「本が好き!」の和氣正幸さん。和氣さんは、「本が好き!」の運営のほかに、全国・世界各地のユニークな本屋さんのところへ取材に出かけて記事を書いて、ご自身で運営されているBOOKSHOP LOVERというメディアで紹介する活動などもされています。

 

打ち合わせの段階から、「編集者の思いを読者に伝えたいんです!」と強い思いを明かしてくださった和氣さん。参加者のみなさんは全員で8名。全員で円になって座り、和氣さんが聞き手、下田が話し手としてはじまり、徐々に全体でざっくばらんにお話する時間となりました。

 

今回のブログは、イベントでどんな話が繰り広げられたのか、その一部をご紹介します。まずは、みなさんの参加動機を教えていただきました。

 

・わたしも編集者をしていて、なにかブレイクスルーになるきっかけがあるといいなぁと思い参加しました。

・いつもメディアで接するソマリアの情報とは違うものがあるのだろうと思って、それが気になってやってきました。

・会社で人事を担当しています。本屋で、この本がいろんな棚に置いてあって不思議だなぁと思っていたので、書籍がついているチケットを買ってやってきました。

・えほんの翻訳をしています。『僕らはソマリアギャングと夢を語る』は仕事で関わる本のジャンルと違うのですが、読む側としてはいろいろ読むので、本づくりを知りたいと思って参加しました。

・永井さんがどういう方か気になったので、参加しました。

 

など、様々な参加動機でみなさんにお集まりいただきました。

 

下田 : 今日はお集まりいただき、ありがとうございます。僕は、英治出版にきてもうすぐ6年です。大学を出てからは、ITコンサル企業に3年くらいいました。その後は、友人に誘われて1年ほど起業準備をしていたのですが、あまり上手くいかず。それから、英治出版とご縁があって入社しました。もともと、国際協力や紛争に関心があって、出版に興味があったというよりは、英治出版が自分の関心のあるジャンルの本を多く出していたのと、自分のこれまでの経験が重なって、英治出版に参画することになりました。国際協力や紛争のほかには、組織開発や教育分野の本を手掛けています。今日は、本についていろんなご意見を伺えればうれしいですし、出版関係の方もいらっしゃるとのことで、いろいろ勉強させてもらえたらいいなぁと思っています。よろしくお願いします。

 

和氣さん : ではさっそく、質問をしていきたいと思います。『僕らはソマリアギャングと夢を語る』の著者、永井陽右さんとの出会いはどういうきっかけだったのですか?

 

下田 : ある日突然メールがきました。笑 英治出版の問い合わせフォームがあるのですが、そこにメールを送ってくださいました。永井さん自身は、もともと本を書いたらどう? ということを周囲の方に言われたことがきっかけだったそうです。それで、企画をまとめて、英治出版を見つけてくれてメールをくださいました。

 

――永井さんが英治出版に企画を持ち込んでいただいたことがきっかけで、本書はできました。英治出版では、問い合わせフォームからいただいた企画は、全社員に共有されるようになっています。そのなかで、永井さんの企画を見た下田が彼の活動内容を調べていくうちに「おもしろそうだ!」と思い、永井さんに会うことになりました。

 

和氣さん : 会ったときの第一印象はどうでしたか?

 

下田 : 背が高い。笑 僕も185cmあるので結構背が高い方なのですが、僕より高いです。あとは、やっぱり会う前にいろいろ調べますよね、いろんな記事とか寄稿文とかをネットで見つけて。で、それらはめちゃくちゃ堅い文章なんですよね。笑 だから、どんな方なんだろうと思っていたんですけど、背が高くて親しみやすい方だったので、第一印象で持っていたイメージは崩れました。

 

和氣さん : noteで永井さんが連載しているブログは、親しみやすい、くだけた文章という印象がありました。

 

下田 : そうですね、おそらくご本人もくだけた感じを意識してブログは書かれてはいると思うのですが、とにかくはじめてお会いしたときに堅いイメージは崩れました。で、そこから一緒に企画を練っていきました。あらためて、どうして出版したいのですかとか、なぜ今出版なのかという話をしていきました。

 

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――つづいて、和氣さんが参加者のみなさんに質問を投げかけました。

 

和氣さん : 本を読まれて、あるいはネットの記事などを読んで、永井さんはどんな方だと想像しましたか?

 

参加者Aさん : 回答になっていないかもしれませんが、不思議に思ったのは、タクシードライバーが行くなと言うような、危険なところにどうして行っちゃうんだろうと思いました。

 

下田 : 割と考えなしのところは結構あるとは思います。笑 だけど、最低限の担保はとっていると思います。いつも、仲良くなった人や現地のソマリア人メンバーと一緒だったり。

 

――本書のはじめに、永井さんがナイロビを訪れたときのシーンが出てきます。彼の宿泊先には食料がなかったので、スーパーに行きたかった永井さん。しかし、治安が悪いナイロビの街を一人で出歩くには危険だと思った彼は、宿を出たところの向かいの通りに、こちらを見ていたポールという男性(タクシードライバー)に「一緒にスーパーへ行って欲しい」といきなり声をかけます。

 

和氣さん : にしても、いきなり声をかけるというのはすごいですよね。笑

 

下田 : 僕も大学のとき、1年休学してバックパックで旅をしたんですけど、だいたい「におい」でわかるかなぁと。笑 なんというか、大丈夫そうだ! というにおい。あと、彼なりのロジックもあったのだと思います。客引きとかがたくさんいて、彼らのような「向こうからくる人」についていくのは危ない、と。だけど、ポールはのほほんと立っていたんだそう。笑 相手も人間ですからいきなり話しかけられたら、こわいですよね。それでも、関係性を築くことができたのが永井さんとポールだと思います。(後にポールは、タクシードライバーとして永井さんをスラム街などいろんなところへ連れて行ってくれる)

 

和氣さん : 永井さんがルワンダのジェノサイド記念館に行かれたとき、「もやもやした感覚をいだいていた」とあります。この部分を読んで「素直さ」がある人だと感じたのですが、実際に永井さんと話しているなかでもそう思いましたか?

 

――永井さんが高校生のときに世界史の教科書で知った、ルワンダのジェノサイド。そのときから大学生になったらルワンダに行って、現地がどうなっているのかを知りたいと思っていた永井さん。大学生になって訪れたルワンダは、表立った殺し合いや対立は起きておらず、「アフリカのシンガポール」と呼ばれるほど成長を遂げている国になっているのを目の当たりにして(もちろん、ジェノサイドが残した問題がすべて解決されたわけではない)、もやもやした感覚を抱いている頃に、ジェノサイド記念館を訪れていました。そのもやもやは、「自分は最も耐え難い痛みを受けている人たち、いま危機が迫っている人たちを救いたい」と思っていたからだと本書には書かれています。

 

下田 : まっすぐさはありますよね。ピュアすぎるというくらい。目的をこれって決めたら、それ以外の雑音が見えなくなる方。危ないからやめようとかじゃなくて、そこにニーズがあるならそこの問題を知りたいし、自分ができることがあるならやる、と考える方ですね。

 

和氣さん : これまでお話を伺っていて、素直なところと理論的なところの両方をお持ちの方だと思いましたが、本をつくるにあたって、彼の素直な部分を出していこうとされたのはどうしてですか?

 

下田 : それは、この本を誰に読んでもらいたいかということですね。たとえば、国際協力の実践者にするのか、若い人をターゲットにするのかで違ってきます。最初は、国際協力に関心のある若い人にしようと考えました。ただそれだと、いろいろと突っ込みどころが出てくるなぁと。どういうことかというと、これは永井さん自身も認識していることなんですが、日本ソマリア青年機構の活動だけでソマリアの問題を解決できているわけではないです。だけど、将来テロリストになるかもしれない若者を更生させているという点では、確実な変化を起こしています。

学生主体の、新しいアプローチを見出したという点で、彼の活動はとても価値のあることだと思ったので「何かをやりたいと思っている若い人」に読んでもらいたいと思いました。「国際協力論」じゃなくて、彼のストーリーを紐解いていくとそれがとてもおもしろく、いろんな壁にぶつかりながら乗り越えていくプロセスを共有しようと思ったのです。

 

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和氣さん : 装幀で気になることがあるとおっしゃっていた方がおられますが、どういう点で気になりましたか?

 

参加者Bさん : そうですね、シンプルすぎるような、まだビジネス書っぽいというか・・・。

 

参加者Cさん : 帯の写真はどうしてカラーじゃないんですか?

 

和氣さん : 本の装丁は、まずはデザイナーさんから複数案をいただいてから、練り上げていくんですよね。

 

下田 : そうですね。結論から言えば、永井さんのイメージに合ったのがこの装幀でした。青はソマリアの色で、日本ソマリア青年機構も青をメインカラーにしています。写真を押し出さなかったのも、タイトルを打ち出したいという永井さんと僕の意図によります。

社内でタイトルを決めるときに、「このタイトルで内容が伝わるか」などいろんな意見がありました。でも、永井さんはすごく気に入ってくださったんです。それを大事にしようと。著者と一緒に本を長く世に届けるためにも、著者が気持ちよく「これが自分の本です」といえる形にするのが、結果としていいと思っています。

英治出版は「絶版にしない出版社」を掲げています。「著者を応援する」が経営理念としてあるので、すぐに絶版になるとその人の応援にならないという意図があり、絶版にしないと言っています。本は形にして世に出すので、「あの本を出した人」として残っていきます。だから、絶版になっていたら悲しいですよね。絶版にしないためにも応援が必要で、お互いに応援しあう関係というのが一番大切だと思っています。

 

参加者Dさん : 若い人がこの本でインスパイアされるといいですね。

 

下田 : はい。永井さんも言っている「学生だからあきらめるんじゃなくて、学生だからできることがある」を突き詰めて考えていくと、ちがうアイデアやアプローチにたどり着くのではないかと思います。

 

 

イベントで話された一部をご紹介してきましたが、こうして、本づくりについて読者の方から意見を伺う機会は普段ははかなかないことなので、話し手の下田にとって、とても新鮮で気づきがある機会だったようです。

 

今回は第1回の「編集者と語り合う夕べ」でしたが、今後もほかの書籍を用いて開催される予定ですので、ご関心のある方はぜひご参加いただければと思います。

 

あらためまして、このような機会をつくっていただいた和氣さん、そして今回参加してくださったみなさん、本当にありがとうございました!

 

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『僕らはソマリアギャングと夢を語る――「テロリストではない未来」をつくる挑戦』

9784862762221

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