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4月25日は「世界マラリア・デー」!人生の折り返し地点で、マラリア撲滅に挑む男。

最も人間を殺している動物

 

「危険な動物」と言えば、みなさんは何をイメージするでしょうか?
蛇、オオカミ、ライオン…
確かにそれらの動物も、毎年人間を襲っているようです。

しかし、最も人間を殺している動物は違います。

 

Infographic: The World’s Deadliest Animals | Statista
You will find more statistics at Statista

 

それは、「蚊」です。

 

 

マラリアの脅威

 

蚊がもたらす最も危険な病気と言われているのが「マラリア」です。
マラリアは、エイズ・結核に並び、「世界3大感染症」の一つと言われています。

WHOのワールド・マラリア・レポートによれば、
2015年に2億1400万人がマラリアにかかり、約43.8万人の死者が出たそうです。
これは、マラリアによって約1~2分に1人が命を落としている計算になります。
そして、その死亡者の約7割は5歳未満の子どもであり、
世界のマラリアの死亡者の9割はアフリカが占めているそうです。

 

ここ最近では、世界中でジカ熱の猛威が報道されています。
また、代々木公園近辺で起きた「デング熱感染」騒動は記憶に新しいのではないでしょうか?

どれも蚊が媒介する病気です。

「日本に暮らす私たちにとって、マラリアも決して他人事ではありません」

 

 

「世界マラリア・デー」、私たちにできること

 

毎年4月25日は世界マラリア・デーです。

全世界的に行われているマラリア撲滅への努力を認め合い、機運を持ち上げる日として、2007年にWHOが制定しました。

NPO法人マラリア・ノーモア・ジャパンさんはこの日を記念して、
「刺されるだけで簡単にかかってしまうマラリア」に対して、
「クリックするだけで簡単に支援をできる仕組み」で対抗しています。

4月25日は「世界マラリアデー」!子どもたちのために無料で支援しよう!

gooddoさんの仕組みを通じ、1いいねにつき10円が協賛企業から寄付される仕組みです。

同団体によれば、

・100円で子ども1人の診断検査キットと初期治療の抗マラリア薬を届けられる
・1,000円で蚊帳を一つ届けられる

そうです。

世界マラリア・デーに私たちにできる第一歩として、まずはこの取り組みに参加してみるのはいかがでしょうか?

 

 

人生の折り返し地点で、マラリア撲滅に向けて動き出した男

 

英治出版からは今年、水野達男さんの著書『人生の折り返し地点で、僕は少しだけ世界を変えたいと思った。――第2の人生 マラリアに挑む』を出版しました。

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50代にして、これまで続けてきた農薬ビジネスから離れ、突如としてアフリカにおける蚊帳事業を担当することになった水野さん。
さらに58歳の時には、マラリアのない世界を目指すNPO法人マラリア・ノーモア・ジャパンに転身します。

これからシニアになる人こそ経験、知識とネットワークを活かしてグローバルな視点でチャレンジしてほしい

「挑戦に遅すぎるということはない」という勇気をくださるメッセージが込められた本です。

1歳半になる息子をマラリアで失った19歳の母親と出会い、この問題を根絶するために今も挑戦を続けられています。

ぜひ「世界マラリア・デー」を機会に、ご一読ください!

 

 

 

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水野達男
NPO法人マラリア・ノーモア・ジャパン専務理事兼事務局長。
北海道大学農学部を卒業。22年間の米外資系企業勤務を経て、1999年、住友化学株式会社に入社。日本国内や南北アメリカ市場における農業製品のマーケティングを手がける。2007年、アフリカのタンザニアでマラリア予防蚊帳「オリセットネット」を製造・販売するジョイントベンチャーの日本側リーダーに就任。現地の合弁工場の開設、年間3000万張りの生産体制の確立、一般市場のスーパーマーケットでの販売、研究所の設立などを行い、事業を軌道に乗せた実績を持つ。
2012年11月から現職。イベントや講演による啓発活動や、マラリア対策の事業開発などに取り組む。また、これまでの経験を活かして企業の海外ビジネス支援や研修の講師を務めるなど、幅広い分野で活動している。

◆NPO法人マラリア・ノーモア・ジャパン
http://www.mnmj.asia/

◆あなたの「いいね!」が、子どもたちの 支援に!
http://gooddo.jp/video/?p=5242

◆ブログ記事
「変化を自然に受け入れる」50代でNPOに転身した『人生の折り返し地点で、僕は少しだけ世界を変えたいと思った。』著者・水野達男さんが大切にしていることとは!
http://www.eijipress.co.jp/blog/2016/01/25/22551/

ボローニャ・ブックフェアに行ってきました

イタリア北部ボローニャで毎年開催される絵本・児童書専門の国際見本市、Bologna Children’s Book Fair。4月4日~7日に行われた今年のフェアを、4日・5日の2日間視察してきました。

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英治出版は主にビジネス書・社会書の出版社。10年前、スリランカの子どもたちを応援するプロジェクトの一環で絵本『南の島の「プルワン」』を出版しましたが、基本的には絵本や児童書は出していません。しかし今回、ふだんの仕事では得がたい刺激を求めて行ってきました。個人的にも子どもに日々絵本を読み聞かせているので興味津々。

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欧州最古の大学もある歴史豊かなまちボローニャ。ブックフェアはここで50年以上の歴史を持っています。絵本・児童書の出版にかかわる会社や作家、イラストレーターなどが世界中から参加します。会場は中央駅から少し北にある広大なコンベンションセンター。

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フランクフルトやロンドンでのブックフェアには何度も参加していますが、ボローニャは会場の様子がちょっと異なります。出版社のブースのほかに、まるで美術館のような展示スペースがいくつもあるのです。

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入り口のすぐ傍には歴代の優れた絵本の原画展が。

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毎年の優秀作品を表彰する「ボローニャ・ラガッツィ賞」の受賞作は正面の通路にショーケースで展示されていました。

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これは縦に開いて読んでいく珍しい絵本。フランスの新人作家の作品です。全部広げると3メートルぐらいの長さになります。おもしろいので子どものお土産に一冊購入。絵だけでも楽しめます。

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これはイラストレーターの方が自分の作品見本や連絡先を貼れる掲示板です。出版社の人は「これは!」というものを見つけると作者に連絡して仕事の相談などができるわけです。テープや画鋲で貼られていますが、絵のカード入りの箱をクギで打ち付ける人もいたりと自由な感じ。

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出版者のブースも児童書ならではの雰囲気のものが多く見られます。上からモビールがぶら下がっていたり、

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絵本そのものがぶら下がっているのにはびっくりしました(これはどうかと思いますが)。

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これはシェークスピアの『ヴェニスの商人』です。文学の名作を美しい絵本にして出すのはよい取り組みだと思います。

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塗り絵の本はいま世界的なブーム。あちこちで見かけました。ストレス解消にいいのだとか。

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こんな飛び出す絵本も! これはブルガリアの作品。もやは絵本には見えません。やり過ぎではと思いましたが(閉じるのが大変そうでした)、物としての本の魅力を考えるうえで、自由な造本の実例はとても刺激的です。

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先述の「ボローニャ・ラガッツィ賞」では今年から新たに「disability」部門が設けられ、障害にかかわる優れた作品が表彰されていました。いわばソーシャルな絵本。これは視覚障害の子どもの世界を描いた中国の作品です。

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全体的に、地元イタリアの出版社が多いのは当然としても、フランクフルトやロンドンのフェアに比べて非英語圏の比率が高い印象を受けました。写真はチェコの本。目にした本の多くが英語以外の言語の作品でした。絵本は言語の壁を超えやすい面もありますね。字のない絵だけの絵本もあります。

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以上、各地の出版社の方や絵本作家の方とお話もでき、楽しい2日間でした。英治出版のこれからの仕事にどう活きるかはわかりませんが、もっと自由に発想して本づくりを楽しんでいけたらと思います。

3月11日に向けて③――支援を受ける人に、「気まずい」思いをさせていないか。

親切の「つもり」

 

突然ですが、人からこんな風に聞かれたとき、あなたはどう答えますか?

「明治通りには、どのように行けばいいですか?」

明治通りの場所を知っているあなたは、こう答えるかもしれません。

「このまま真っすぐ進んで、2つ目の角を左に曲がってください」

一見、とても親切な受け答えに思えます。
しかし、これは本当の意味で相手に役立つ答え方でしょうか?

もし明治通りへの行き方を伝える代わりに、こんな風に問いかけていたらどうでしょう?

「目的地はどこですか?」

その人が明治通りを目指していたのは、目的地へ行くための単なる目安だった可能性があります。
その目的地によっては、もしかしたらこんな風に答えることが最も親切かもしれません。

「そこに行かれるのでしたら、この道を戻っていただいて3つ目の角で右に曲がると早いですよ」

 

 

上司と部下、コンサルタントとクライアント、家族関係、ちょっとした人間関係…
「支援」は、生活上の様々な場面で現れるテーマです。

3月11日を前にして、「被災地の支援のあり方」について考えられている方も多いかと思います。
このタイミングでいま一度、

「親切のつもり」で終わらず、「本当に相手の役に立つ支援」をするために大切なこととは?

を考えてみたいと思います。

 

今回参考にするのは、組織心理学の大家であるエドガー・H・シャイン教授の著書『人を助けるとはどういうことか――本当の「協力関係」をつくる7つの原則』です。

 

 

支援を受ける人は「気まずい」

 

シャイン教授によると、「支援」が行われる状況において、「支援をする人」と「支援を受ける人」の関係は不釣り合いになるそうです。

支援をする人
知恵や専門知識に頼られ、地位と権力を得ることで、「一段高い位置(ワンアップ)」にいる。

支援を受ける人
「すべきことができない」という自信を失った状態におり、誰かに依存する状態を認めたくない、時には恥辱を感じることすらある、「一段低い位置(ワンダウン)」にいる。

支援のプロセスで物事がうまくいかなくなる原因の多くは、両者間のこの力の不均衡にあります。
もしもこれを認めずに、しっかりと対処をしなかったらどうなるでしょう?

「支援を受ける人」は、この力の格差をなくすために、「支援をする人」を無能に見せて立場を下げようと行動してしまうかもしれません。
たとえば、相手からの助言に対して「そんなことはもうとっくに考えたことがあり、取るに足らないものだ」と見くびるようになる可能性があります。
あるいは「支援をする人」は、過剰な自信から時期尚早なアドバイスをしてしまい、相手の中にある真の問題を探り出す機会を失ってしまうかもしれません。

では、これらのことを踏まえた上で有効な支援関係を成立させるために、どんなことに注意すればよいでしょうか?

本書に収録されている「支援関係における7つの原則」の一つに、「支援関係が公平なものだと見なされたとき、効果的な支援が生まれる」というものがあります。
「支援をする人」「支援を受ける人」の双方が大切にすべきこととして、そこにはこんなことが書かれています。

支援をする人
支援を求める人は気まずい思いをしているということを思い出そう。だからクライアント(支援を受ける人)の本当の望みは何か、どうすれば最高の支援ができるかを必ず尋ねること。

支援を受ける人
何が役に立ち、何が役に立たないかというフィードバックを支援者(支援をする人)に与える機会を探そう。

このちょっとした心がけで、ワンアップ・ワンダウンの力関係を正し、効果的な支援関係が生まれるかもしれません。

 

以下は7つの原則の一覧です。
よりよい支援を築くために、ぜひ参考にしてください。

原則1:与える側も受け入れる側も用意ができているとき、効果的な支援が生じる。

原則2:支援関係が公平なものだと見なされたとき、効果的な支援が生まれる。

原則3:支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる。

原則4:あなたの言動のすべてが、人間関係の将来を決定づける介入である。

原則5:効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる。

原則6:問題を抱えている当事者はクライアントである。

原則7:すべての答えを得ることはできない。

書籍の中では、各原則に沿って行動するための具体的なコツも書かれています。

 

 

まずは目の前の人から

 

冒頭にも書かせていただいた通り、「支援」は人と関わる限り日常のあらゆる場面で考える必要があるテーマです。

人を助けるとはどういうことか』は、被災地の支援に携わっている方はもちろん、本当に役に立ちたい相手がいるすべての方のための1冊です。

大きなことを考えることも大切ですが、まずは身近な人間関係から、自分の目の前の人が本当に必要としている支援とは何か、改めて考えてみるのはどうでしょう?

そしてもし、

「自分のことで精一杯の中で、『人を助ける』なんて考えている余裕はない!」

と思ってしまっている方がいれば、この本が支え合うことの大切さに触れる機会になれば幸いです。

人を助けるとはどういうことか_表紙

人を助けるとはどういうことか――本当の「協力関係」をつくる7つの原則
著:エドガー・H・シャイン

※オーディオブックも発売しました!
http://www.febe.jp/product/233305

エドガー・H・シャイン Edgar H. Schein
1928年生まれ。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院名誉教授。シカゴ大学卒業後、スタンフォード大学で心理学の修士号、ハーバード大学で社会心理学の博士号を取得。1956年よりMITスローン経営大学院で教鞭をとり1964年に組織心理学の教授に就任。1972年から1982年まで組織研究グループの学科長を務めた。2006年に退官し名誉教授となる。組織文化、組織開発、プロセス・コンサルテーション、キャリア・ダイナミクスに関するコンサルティングを行い、アップル、P&G、ヒューレット・パッカード、シンガポール経済開発庁など多数の企業・公的機関をクライアントとしてきた。『キャリア・アンカー』(白桃書房、2003年)、『企業文化』(同、2004年)、『プロセス・コンサルテーション』(同、2012年)、『問いかける技術』(英治出版、2014年)など著書多数。

 


 

【関連記事】

3月11日に向けて①――客観的に振り返り、改めてこれからを考える。

3月11日に向けて②――「ないものを与える」よりも、「あるものを引き出す」

3月11日に向けて②――「ないものを与える」よりも、「あるものを引き出す」

 「持っているもの」から始める

 

2011年3月11日の東日本大震災によって、たくさんのものが失われました。
同時に、被災地の復興に向けた数多くの支援活動も立ち上がり、継続しています。

「支援」というと、「そこにないものを与える」というイメージが強い方もいるかもしれません。

しかし、世界各地で、そして東北の地でも「社会変革ファシリテーター」として活躍するボブ・スティルガーさんはこう言います。

持っていないものを求めず、持っているものから始める

現地の人たちがすでに持っているものを活かすものとして、ボブさんが大切にしている手段が「対話」です。
現地の方々と支援者が、あるいは現地の方々同士が、深く敬意のこもった対話をし、コミュニティを蘇らせていくことで、自立的な変化を起こしていくのです。

ボブ写真

※EIJI PRESS Labで開催した、ボブさんの対話イベントの様子

次に紹介するのは、ボブさんの著書『未来が見えなくなったとき、僕たちは何を語ればいいのだろう』の中に出てくる変化の事例です。

 

 

「もはや支援は必要ない」

 

これは、岩手県山田町大沢地区で起きた物語です。

大沢地区は、津波により188世帯が壊滅し、150人が犠牲となった町です。
多くの仮設住宅では、くじ引きで割り当てられた見ず知らずの人たちとの生活を嫌い、そのコミュニティの一員であることに関心を持てないケースが多いそうです。

しかし大沢地区は違いました。
彼らは自助努力で自己組織化し始め、次のように動きました。

・行政を待たない。何かが必要なときにはそれを得るまで行政とかけあう。問題を大きくしない。迅速に関心ある人たちを招き、話をする。
・地域を超えた人間関係を構築する。つながり続ける。
・必要なことは何でもできるだけ速やかに自分たちでする。誰かを待たない。

こうして育まれた対話によってコミュニティが構築され、

・トレーラーのような仮設住宅に、屋根、玄関先、縁側を作る
・ボランティアで地域をパトロールする
・庭を作って自分たちが食べる野菜を育てる

などの変化が次々に起きていきます。

2011年が終わる頃には、一緒に働いてきた支援団体に、彼らはこう言ったそうです。

「もはや支援は必要ない。本当に助けを必要としている所へ行ってください」

 

 

普通の人々の力で社会は変わる

 

変化を起こした「偉人」たちの話に、私たちは励まされてきました。
でも一方で、どこか「特別な人だからやれたこと」だと、自分ごとにならないこともあります。

ボブさんは、この本の中で言います。

これは我々の物語だ。どこにでもいる人たちの物語だから「我々の」物語なのだ。

いたって普通の人々にも、「自分たちがすでに持っているもの」に気づくことで、変化を起こすことができる。
そういう人たちが起こした変化だからこそ、人々を勇気付ける。

そんな「普通の一人ひとり」の力を引き出していくのが、「対話」や「コミュニティ」の力なのではないでしょうか。

社会変革が起きるのは、私たちが自分たちの持っているものに気づいたときである。

普通の人が行うことこそが、とてつもない変化を創ると信じているのだ。多数の人々がほんの少し考え方を変え、かつ一緒に行動を始めるときにこそ、変化が起こる。

 

ボブさんの著書『未来が見えなくなったとき、僕たちは何を語ればいいのだろう』には、彼が現場で出会ってきたストーリーのみならず、大事な人との対話を深めるための問いかけ集「パワフル・クエスチョン」も収録されています。
今でも被災地を訪ね続けるボブさんの想いと知恵に、ぜひ触れてみてください。

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未来が見えなくなったとき、僕たちは何を語ればいいのだろう
著:ボブ・スティルガー

ボブ・スティルガー Bob Stilger
ニュー・ストーリーズ共同代表、社会変革ファシリテーター。1970年に早稲田大学に留学。アメリカで地域開発の仕事に従事した後、CIIS大学院にて博士号取得。2005~2009年ベルカナ研究所共同代表。地域や組織にイノベーションをもたらす対話の場づくりのプロとして、北米、南アフリカ、ジンバブエ、ブラジル、インドなどで活動。2011年の東日本大震災の発災後はたびたび来日し復興のための対話の場づくりに取り組んできた。

 

※2016年1月にボブさんが女川を訪問した際の記録が、こちらの記事にご本人の言葉で綴られています。

女川への旅――しなやかな回復力による地域再生(ボブ・スティルガーさん寄稿)

 

3月11日に向けて①――客観的に振り返り、改めてこれからを考える。

あれから5年

 

2011年3月 11日に起きた東日本大震災から、今年で5年になります。
新聞やテレビ番組でも、震災関連のニュースが報じられる機会が増えてきました。

あの瞬間、何をしていたか。
あれから、自分はどう変わったか。
現場は、今どういう状況にあるか。

間もなくその日を迎える今、皆さんはどんなことを考えているでしょうか?

 

震災後、英治出版は自分たちの力でできることを考え、「出版」という手段を使って『災害時のこころのケア』を製作し、被害にあわれた地域に配布いたしました。

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『災害時のこころのケア』 10万部を無償配布します

 

5年経った今私たちにできることとして、あの出来事を風化させずに、この節目の時に、改めてこれからの私たちのあり方を考えるきっかけになる本を紹介したいと思います。

・あの震災の後、日本はどう変わったのか?あるいは変わらなかったのか?
・「コミュニティ」「対話」の力が被災地にもたらすもの
・本当に相手のためになる支援とは何か?

この3つのテーマで、3タイトルをご紹介していきます。

 

今回の記事では、このタイミングで英治出版から発行することになった『3.11 震災は日本を変えたのか』を。

 

 

3つのナラティブ(物語)

 

未曽有の事態を経験して、各所で盛んにこう叫ばれました。

「日本は変わる」

皆さんは、実際にどれくらいの変化を感じられましたか?
果たして本当に変化は起きたのでしょうか?

何が変わり、何が変わらなかったのでしょうか?

著者のリチャード・J・サミュエルズ教授は、「安全保障」「エネルギー」「地方自治」の3つの分野から、それらを解き明かしていきます。
そしてこの各分野において、政治家やメディアは、この災害を様々なナラティブ(物語)で解釈し、国民を牽引しようとしていたと言います。

その主なナラティブは、次の3つです。

・新たな方向へ進む必要がある(劇的な変化を支持)
・モデルは変えず、以前よりもうまく行うべきだ(現状維持を支持)
・理想的な過去に戻らなければならない(過去への回帰を支持)

次の表は、事例を挙げて「3つの分野」と「3つのナラティブ」を掛け合わせた簡易図です。

3.11表

このようなナラティブが、いったいどのように語られ、何を生み出したのでしょうか?
当時の状況を「ナラティブの闘い」として見つめ直すことで、これからを考える手がかりも見つかるかもしれません。

 

 

いま一度、客観的な目線を

 

この本の特徴は、日本の政治・安全保障を専門とする海外の研究者が客観的に震災後の変化を論じていることです。
膨大な資料から、当時の政治家の発言や、災害の歴史的・国際的比較まで綴られています。

ぜひいま一度、この客観的な目線から「あの時」と「これまで」を見つめ直し、そして改めて自身の視点で「これから」を考える機会にしていただけたら幸いです。

3.11表紙背景付

3.11 震災は日本を変えたのか
著:リチャード・J・サミュエルズ

リチャード・J・サミュエルズ Richard J. Samuels
マサチューセッツ工科大学(MIT)政治学部フォードインターナショナル教授、MIT国際研究センター所長、MIT日本研究プログラム創設者。専門は日本の政治、安全保障。1992~95年MIT政治学部長、2001~08年日米友好基金理事長を務めた。日米の相互理解と文化交流への寄与により旭日重光章を受章している。著書『富国強兵の遺産―技術戦略にみる日本の総合安全保障』(奥田章順訳、三田出版会、1997年)で日本に関する優れた英語文献に贈られるジョン・ホイットニー・ホール・ブック賞および有沢広巳記念賞を受賞。また『日本における国家と企業―エネルギー産業の歴史と国際比較』(廣松毅監訳、多賀出版、1999年)で大平正芳記念賞を、『マキァヴェッリの子どもたち―日伊の政治指導者は何を成し遂げ、何を残したか』(鶴田知佳子、村田久美子訳、東洋経済新報社、2007年)で米国政治学会エルビス・シュローダー賞を受賞した。他の著書に『日本防衛の大戦略―富国強兵からゴルディロックス・コンセンサスまで』(白石隆訳、日本経済新聞出版社、2009年)などがある。