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ばらばらの靴下を“3つ1組”で売ったら?――「些細な差別化」を越えて、「破壊的なイノベーション」をデザインする

「ばらばらの靴下を3つ1組で売ったら、どうなるだろう?」

冗談みたいなアイデアに思えるでしょうか?

しかし、この一見常識外れのアイデアを実現し、10代の女の子たちに大きな支持を得て急成長している会社があるのです。それは、アメリカのサンフランシスコで生まれた「リトル・ミス・マッチ」。創業以降、瞬く間に全米中に広がりました。(日本にも上陸しています!)

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リトルミスマッチ(日本)HPより

 

「2足1組、同じ柄」という従来の靴下の概念にしばられていたら、きっとこのようなアイデアは生まれなかったでしょう。

これまでの靴下は、柄や色を変えたり、長さや機能を変えたりして「差別化」を図ることがほとんどでした。しかし、どの靴下においても「2足1組、同じ柄」という常識は長年変わらなかったのです。つまり、「些細な差別化」しかされてこなかった、と言えます。

では、どうすれば「些細な差別化」を越えて、リトル・ミス・マッチのような「破壊的なイノベーション」を起こすことができるでしょうか?

『デザインコンサルタントの仕事術』(著:ルーク・ウィリアムス)では、

(1)破壊的仮説を立てる
(2)破壊的チャンスを見つける
(3)破壊的アイデアを生み出す
(4)破壊的ソリューションを仕上げる
(5)破壊的プレゼンで売り込む

と、一気通貫の5つのステップでそれぞれの手順を丁寧に解説しています。この記事では、リトル・ミス・マッチを事例に前半の3つのステップの概要を紹介します!

 

 

1.「ひどいアイデア」こそ価値がある!:破壊的仮説を立てる

 

「◯◯したらどうなるだろう?」という問いを作ることで仮説を立てます。しかし、「色が違ったら」「新機能を追加したら」「海外で売り出したら」のような小さな変化で空欄を埋めようとしてはいけません。空欄には、一見狂気の沙汰に見えることを書き込みます。

リトル・ミス・マッチの場合は、「揃っていない靴下を売りはじめた会社があったらどうだろう?」という仮説を立てました。話し合っていた誰もがひどい思いつきだと取り合いませんでした。しかしリトル・ミス・マッチの共同設立者でありCEOのジョナ・ストー氏にとっては、代わり映えのない靴下業界の常識を破壊する可能性を秘めた仮説として残ったのです。

《破壊的仮説を立てるヒント》

①破壊したいと考えている業界やカテゴリーを定義する
②カテゴリーにおける常識・前提・習慣を見つける
③常識に対する見方を変えてみる

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2.行動観察で現場に入り込む!:破壊的チャンスを見つける

 

立てた仮説の中でチャンスを見つけ出すためには、行動観察などを通じて、消費者が実際に感じたことや、商品の周辺でどのような動作をするかなどをしっかりととらえる必要があります。ジョナ氏たちも、顧客の住む世界に浸り、顧客の視点でものを見ようと、中心の顧客となりそうなトゥイーン層(8歳〜12歳の子ども)を注意深く観察しました。

その結果、「10歳前後の女の子は、自身を子どもと大人の中間にいる存在だと思っている」という洞察を得ました。これにより、子ども向けの靴下と大人向けの靴下の中間において魅力的な靴下を作るというチャンスを発見したのです。

《破壊的チャンスを見つけるヒント》

①観察方法を決め、実施する
②観察によって見つけたパターンに解釈を加え、洞察に変換する
③破壊的チャンスを見つける

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3.成功するビジネスモデルに落とし込む:破壊的アイデアを生み出す

 

ここまでの段階で見つけ出して来たチャンスを、実行に移すための具体的なアイデアに変換していきます。

ジョナ氏たちは、見いだしたチャンスの要素を分解し、まずは「マーケットでどのように注目を集めるか」という課題から考え始めました。小売業界の中では通常、ライセンスもの(ディズニー、ナイキ、デル、など)は一般商品(商標のないもの)よりも値段が高いです。このことをヒントに、「覚えやすい名前で10歳前後の層にうけるキャラクターを作り、その他大勢とは違うブランドを確立する」というアイデアが生まれます。

《破壊的アイデアを生み出すヒント》

①チャンスを要素に分解し、アイデアを挙げる
②アイデアを混ぜ合わせる
③アイデアを明文化する

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その後リトル・ミス・マッチは、小売業者からのフィードバックや路上の女の子たちへのヒアリングでこのアイデアの実現性を確信します。そして、多くの投資や契約を獲得し、自前店舗の拡大や多くの百貨店・専門店で販売されるようになりました。

 

『デザインコンサルタントの仕事術』では、上記のステップの更に詳しい取り組み方や、その先のソリューションの仕上げ・プレゼンによる売り込み方法まで紹介しています。

現代社会では、世界中のあらゆる情報をいつでもだれもが簡単に手に入れることができ、また色々なモノやサービスがあふれかえっています。こうした環境で、企業も個人も常に大胆に動き続けなければいけないと著者は言います。

是非、本書を参考に、破壊的なパフォーマンスに挑んでみてはいかがでしょうか?

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『デザインコンサルタントの仕事術』

偉大なリーダーはなぜ決断の「内容」よりも「プロセス」にこだわるのか?――キューバ危機を回避したジョン・F・ケネディ大統領に学ぶ

決断の“内容”は本質ではない?

 

「あの時、違った決断をしていれば…!」

過去を振り返ると、後悔のシーンが思い浮かぶという方…いらっしゃるのではないでしょうか?そして同じ失敗を繰り返さないよう、多くの人はそのシーンを反省することと思います。

さて、みなさんはどんな反省をしますか?

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「Aという判断をすべきではなく、
Bという判断をすべきだった!」

『決断の本質――プロセス思考の意思決定マネジメント』(著:マイケル・A・ロベルト)では、このような反省を「内容中心の学習」と呼んでいます。そして、

偉大なリーダーの決断の本質は
ここにはない

 

といいます。

意思決定の結果が失敗したとき、リーダーの多くは問題そのものに目を向け、判断の誤りや前提条件の欠陥を探そうとする。しかしさらに一歩踏み込んで、なぜ過ちを犯したのかを見つけ出そうとするリーダーは多くない。 「内容中心の学習」に終始する人があまりに多すぎるのだ。(本書より)

このような反省は、次にまた同じような状況に陥った時には有効かもしれません。しかし、そもそも誤った決断に陥った原因…決断の「内容」ではなく「プロセス」を見直すことができれば、もっと多くのシチュエーションにおける正しい決断を行えるようになるのではないでしょうか?

ジョン・F・ケネディはまさに決断の「プロセス」を修正した人物でした。

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ジョン・F・ケネディ(第35代アメリカ合衆国大統領)

 

 

ケネディの失態:ピッグス湾事件

 

1961年、アメリカへ亡命していたキューバ人部隊「反革命傭兵軍」は、祖国キューバのフィデル・カストロ革命政権の転覆を狙っていました。同年4月、ジョン・F・ケネディ大統領は反革命傭兵軍によるキューバ・ピッグス湾への侵攻を米国政府として支援する決断をします。しかし、反乱部隊はキューバの海岸に上陸してから三日後、そのほとんど全員がカストロの軍隊に殺害されるか、捕虜となる結果となりました。

この侵攻は、人命の損失という点でも、新任大統領の政治的失態という点でも、まったくの大惨事であり、世界各国はケネディ政権の行為を非難した。侵攻を支持するという決断が最悪の結果になったことに気づいた大統領は、アドバイザーに「連中にGOサインを出すなんて、私も馬鹿なことをしたものだ」と漏らした。(本書より)

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ケネディ大統領の意思決定プロセスには、様々な欠陥がありました。

■侵攻の提唱者たちは自分たちの計画の弱点やリスクが明らかになるのを恐れて、国務省の中堅職員を討議から外した。

■公平な立場の専門家に助言を求めることをしなかった。

■反対意見や論争がないまま、重要な前提条件の多くが見過ごされた。

侵攻が失敗に終わった後、ケネディ大統領はこの事件における意思決定プロセスを見直し、重要な改善を行います。そして、1962年10月にソ連がキューバに核ミサイルを配置した(キューバ危機)ことを知ったケネディは、アドバイザーたちを招集して対策を協議する際、この改善後のプロセスを用いるのです。

具体的に、どのような改善が行われたのでしょうか?

 

 

重視した決断の“プロセス” 

 

改善点①

会議中は通常の手続きに関する規則や序列を忘れるようにグループに指示

 

改善点②

自分よりも専門知識を持つと思われる人との議論を避けるような官僚的発想をやめるよう指示

 

改善点③

中堅職員や部外の専門家を検討の場に招き、偏見のない情報を得られるようにする

 

改善点④:小グループに二つの行動方針案を作成させ、互いの提案に対して詳細な批判文書を作成させた

 

改善点⑤:大統領の腹心二人に「悪魔の代弁者(わざと異論を唱える人)」の役割を与え、提案のリスクや弱点を徹底的に分析させた

 

改善点⑥:大統領はわざと何回かの会議に出席せず、出席者に率直で奇譚のない意見を述べさせた

 

ピッグス湾事件に対して、単に「あの時ああ決断しておけばよかった」と決断の“結果”を反省しただけではないことが、これらの改善策から分かると思います。核戦争が起き、第三次世界対戦が勃発すると恐れられていたキューバ危機が解決された裏には、ケネディ大統領のこのような決断“プロセス”の改善があったのでした。

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本書『決断の本質――プロセス思考の意思決定マネジメント』では、意思決定のプロセスの「4C(①Composition:メンバー構成、②Context:背景、③Communication:コミュニケーション、④Control:コントロール)」の解説を始め、建設的な対立と適切なコンセンサスを共存させる方法が説かれています。

先日1月19日に富士通の社長人事が発表されました。次期代表取締役に就任される田中達也氏は、記者会見における「愛読書は?」の質問に本書を挙げてくださり、「名著だと思っている」と言ってくださいました。おかげさまで、一時期在庫を切らしてしまったほどの大反響を呼んでいます。

「内容中心の学習」を離れ、「正しい決断」よりも「正しく決断」する方法を学ぶ一助になると思います!

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『決断の本質――プロセス思考の意思決定マネジメント』

顧客“第二”で、売上・利益3倍、顧客5倍!の会社が“第一”にしたものとは?

Customer Second(顧客第二)の奇跡

「顧客が第一だ。」更には「お客様は神様だ。」…と経営理念をかかげる企業はたくさんあると思います。製品やサービスを届ける企業にとって、その届け先である顧客を大事にすることは確かに大切ですよね。

そんな中で、なんと!経営理念として高らかと「顧客は第二」と謳う企業があります!インドの「HCLテクノロジーズ」です。同社は、世界31ヶ国でビジネスを展開し、従業員数は9万7千5百人にのぼる大企業(2015年2月現在)で、インドの5大IT企業と言われています。顧客を第二にしたこの会社が第一にしたものとは何でしょう?それは…

従業員です。

会社の経営理念は「従業員第一主義=Employees First, Customers Second」。以下、同社のHPより引用です。

お客様に真の価値を創出することができるのは、お客様と常に接している従業員であり、経営陣はビジネスの最前線にいる従業員を支え、能力を発揮するために必要な権限とサポートを与えることに重点を置くという考え方です。お客様と常に接している従業員を第一に考えることでお客様に真の価値を創出しご提供する。つまり「従業員第一」とは究極の「お客様第一主義」なのです。

単に身近な仲間を大切にしようと述べているだけでなく、それがゆくゆくはお客様を大切にすることに繋がるというのです。

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この「従業員第一」を提唱したのは、会社の経営難の時にCEOに就任したヴィニート・ナイアー氏です。この理念を掲げ、様々な改革を行った結果、どうなったでしょう?なんと、就任から4年で…

 

■離職率:半減
■売上:3倍
■利益:3倍

■顧客:5倍

 

中でも、「第二」とした顧客の数が5倍になっているのは驚異的です…。引用した「従業員第一は、究極の顧客第一主義」を体現していると言えるでしょう。

それでは、「従業員第一主義」として、ヴィニート・ナイアー氏は具体的に何をしたのでしょうか?

詳しい取り組みの内容は、同氏の著作『社員を大切にする会社―5万人と歩んだ企業変革のストーリー』に詳しく書かれています。この記事では、同書に沿って、ナイアー氏が取り組んだ4つの手順に少しだけ触れてみたいと思います。

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HCL JAPAN HPより

 

世界で最もモダンな経営

 

手順①:鏡の中をのぞく

人や企業が“変わる”というのは、「現地点=A地点」から「目的地=B地点」へ移動することです。「鏡をのぞく」とは、A地点である「自分たちの現状」…多くの場合目を背けたい不都合な現状を直視することです。

「鏡よ鏡」とはコミュニケーション・エクササイズである。社内のあらゆる従業員と対話し、あるがままの真実について語り合うことによって、基本的に誰もが気づいていながらも、決して口に出そうとしない、重大な事実を従業員に認識させるというものだ。(p.33)

ナイアー氏は、世界中の拠点を回り、あらゆる階層の従業員と語り合います。そして、従業員を変革の列車に乗せ、「従業員第一、顧客第二」という将来像(B地点)を共有しました。

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手順②:透明性を通して信頼を築く

「鏡をのぞく」で変革の必要性を共有したものの、従業員との信頼がなければ変革は成功しません。そこで、ナイアー氏は「組織の徹底的な透明化」に着手します。 財務情報の従業員への公開を手始めに、従業員が誰でも投稿でき、それに経営陣が答えるオンラインフォーラムを開設します。これにより、従業員の中に溜まっていた多くの不満も出たそうですが、社員の質問に他の社員が答える、という社員同士の助け合いも生まれました。

経営幹部が重要な事実を、たとえ悪い内容であっても打ち明け、その事実について率直な対話を促すなら、経営陣が本気だと従業員も信じるだろう。すると、経営幹部が対応策や解決策について方針を決めるよりも先に、従業員レベルから何らかの積極的な行動が始まる。指示されなくとも、従業員が問題に取り組みはじめる ―そんな光景を私たちは何度も目にしてきた。(p.17)

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手順③:ピラミッドを逆さまにする

更にナイアー氏は、大きな組織に内在する構造的な問題に着手します。

HCLTにおいて組織構造の最大の問題とは、この構造が、いわゆる「バリューゾーン」と呼ばれる、実際に顧客に価値を創出している現場の人たちを支えていないという点である。知識経済におけるサービス提供会社では、バリューゾーンは顧客と従業員との接点に存在する。(中略)矛盾したことに、こうした価値創造者たちがアカウンタビリティを負う相手は、たいてい上司やマネージャたちである。主としてピラミッドの頂点に位置したり、いわゆる「後方支援部門(バックオフィス)」にいる人たちで、いずれもバリューゾーンに直接貢献していない者たちである。(P.18)

ナイアー氏は、このピラミッドを逆さまにします。

そこで私たちは焦点をこのバリューゾーンに移し、組織を逆さまにした。しかも、ただ逆さまにするだけでなく、経営幹部やマネジャー、バックオフィス(人事、財務、教育などの部署)の人たちに、価値創造者に対してアカウンタビリティを負わせるようにした。(P.19)

ひとつの具体策として、スマート・サービス・デスク(SSD)という仕組みがあります。これは、最前線の従業員達が何か問題を抱えた際に、然るべきバックオフィスの人たちに回答期限付きの課題チケットを送るというものです。受け取ったバックオフィスの人たちは、期限内にそれを解消する義務を負います。つまり、「従業員がバックオフィスの人々に対して様々な義務を負う」という通常のアカウンタビリティが逆転しています。

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手順④:権限を移譲する

ここまでの変革を起こしながら、ナイアー氏は更に考えます。せっかくここまでの変革を起こしても、CEOが別の人に変わった途端、また逆戻りしてしまう可能性もあるのではないか?CEOの強すぎる権限をもっと従業員に移譲していく必要があるのではないか?

そこで、組織を「クモ」から「ヒトデ」に移行する作戦を立てます。どういうことでしょうか?

ほとんどの企業は八本足のクモのように機能している(中略)クモの足を一本切り落としても、あなたの手には七本足の生き物が乗っている。クモの頭を切り落とせば、そこにあるのはクモの死骸である(中略)しかし、ヒトデの腕を切れば、新しい腕が再生する。そればかりか、切られた腕から新しい個体が再生することもある。ヒトデにこのような妙技が可能なのは、クモと違い、分散型であるからだ。腕ごとに各主要組織が複製されるからである(p.159)

こうした考えから、様々な施策を通じて、「CEO万能説」を自ら崩してゆきます。

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このような取り組みから、アメリカの世界最大級のビジネス誌であるフォーチュン誌で「世界で最もモダンな経営」と称されました。更なる詳しい取り組みは、ぜひヴィニート・ナイアー氏の著書をご覧ください!

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『社員を大切にする会社―5万人と歩んだ企業変革のストーリー』

リーダーが陥るイノベーションに関する3つの落とし穴

近年のビジネス界で、「イノベーション」の言葉を聞かない日はないと言っても過言ではないかもしれません。2013年にオックスフォード大学が「2020年に702の業種がコンピューターに取って代わられる確率」を計算し、話題となりました。仕事のプロセスにおいても結果においても、従来のあり方にとどまらない刷新が日々求められていると感じます。

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そんな中で、「イノベーション」を起こしたいリーダーやマネージャーが陥りがちな3つの落とし穴を、世界最高峰のMBAスクールであるIESE(イエセ)ビジネススクールのパディ・ミラー&トーマス・ウェデル氏共著『イノベーションは日々の仕事のなかに―価値ある変化のしかけ方』から探ってみたいと思います。本書におけるイノベーションの定義は「昨日までとは違う行動によって、成果を生むこと」です。

 

落とし穴①:合宿のような特別なイベントの中で起こそうとする

何か変化を起こそうとする時、合宿のような非日常空間を生み出してみることは思いつきやすいアイデアです。たとえば、2泊3日の集中合宿を行ったとします。オフィスを離れて宿泊施設に集まり、集中したブレーンストーミング・ミーティングを実施…

しかし、合宿を終えてオフィスに帰ってみたらどうでしょう。出発前と何も変わっておらず、数週間もすれば誰もがいつものやり方に戻っている…そんな経験はありませんか?

本書では、イノベーションの追求は、「特別なイベント」の中でのみ行われるのではなく、あくまで「日常」の中で行われる必要があると説いています。つまり、重要なのは合宿の2日間ではなく、むしろその特別な2日間を除いた363日であり、その中にいかにイノベーションが生み出される環境を作るかなのです。

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落とし穴②:アイデアを無制限に募集してしまう

団体のメンバーや社員のアイデアが自由に提起されることをよしとする風潮があると思います。スイスの医薬受託製造会社であるロンザもその一つで、社員の自由な発想を大切にしています。モットーは「アイデアにダメなものなどない」。ありとあらゆるアイデアを社員から収集します。

しかし、そのほとんどが実は活用されていないということに気づくのです。無制限に収集されたアイデアは、「ただの思いつき」レベルに留まってしまっていました。

そこで、チアミンという商品に関するアイデアを、下記の2つの条件に絞って募ってみることにしました。

■チアミン生産プロセスを改善するためのアイデアであること。
■30%以上のコスト削減を達成できること。

その結果、見込みのありそうなアイデアが集まり、なんとその採用によって「生産性100倍」「製造原価の75%削減」を実現することができたそうです!本書の言う「フォーカスは自由に勝る」を証明している事例と言えるでしょう。

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落とし穴③:自分自身がイノベーションを起こそうとしてしまう

組織のイノベーションを考える時に、まず何よりも組織を率いるリーダーやマネージャーがイノベーションを起こさなければいけないと考えがちです。もちろん起こせるに越したことはありません。しかし、リーダーやマネージャーの本当の役割は、自らがイノベーターになることではなく部下たちがイノベーションを実践できる環境を生み出すことなのです。つまり、イノベーションの「設計者」になること。

イノベーションの設計者にとっての目標は、1つや2つの素晴しいアイデアを生むことではない。「体系的かつ持続的に」イノベーションを創出し、職場のDNAに創造性を埋め込むことだ。(『イノベーションは日々の仕事のなかに』P.17)

リーダー自身のみがイノベーションの能力を持つのではなく、いかに組織の多くの構成員がその能力を持てるかが鍵になります。

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『イノベーションは日々の仕事のなかに―価値ある変化のしかけ方』では、これらの落とし穴を避けて、どうすれば日常の仕事の中で誰もがイノベーションを起こせるかが「5つの行動+1」で平易に書かれています。

《5つの行動+1》

①「フォーカス」:焦点を絞り込むべき領域をリーダーが明確に提示する。
②「外の世界とつながる」:メンバーが外部の情報源とつながれるのをサポートする。
③「アイデアをひねる」:実行段階の前にアイデアを繰り返し迅速に試行する(ラピッド・プロトタイピング)
④「アイデアを選ぶ」:アイデアを選別する優秀なゲートキーパーを育成する。
⑤「ひそかに進める」:社内政治環境を整え、メンバーのために道を切り開く。
⑥「あきらめない」:これらの行動を継続させ、日常業務に浸透させる。

2時間ほどで読めるコンパクトサイズの中に、イノベーションのエッセンスがぎゅっと凝縮された本です。

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『イノベーションは日々の仕事のなかに―価値ある変化のしかけ方』

2月26日(木)には、著者の一人であるパディ・ミラー氏の来日講演がありますので、ご関心あればぜひお申込みください!

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<募集要項>

■日時:2015年2月26日(木) 19:00-20:30
■会場:アカデミーヒルズ 49階 オーディトリアム
(東京都港区六本木6丁目10-1 六本木ヒルズ森タワー49階)
http://www.academyhills.com/aboutus/access/
■最寄駅:東京メトロ日比谷線 六本木駅1C出口/
都営地下鉄 大江戸線「六本木」駅3出口 ほか
■募集人数:25名(先着順とさせていただきます)
■お申込み:無料
■参加申込:以下のページからお申し込みください。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/a657efaf266220
※後日イベントレポートがウェブ上に掲載されます。
顔写真の公開がNGの方は事前にお申し出ください。
※募集人数25名に達し次第、締め切りとさせていただきます。

「話す力」より、ずっと大切な「問いかける技術」――自分をあえて弱い立場においてみよう

仕事でも、プライベートでも、相手の話をよく聞かずに自分ばかり喋っていたら、うまくいきませんよね。

自分が話すだけでなく、相手に話してもらい、その声に耳を傾けるには、上手に「問いかける」ことが求められます。これは簡単なようで、意外に難しいことです。なぜでしょうか。

社会学的な見方によると、「質問する側」は、「質問される側」よりも心理的に弱い立場に身を置くことになるのだそうです。質問とは、それに対する回答を「お願いする」ことだからかもしれません。

たとえば、部下に質問することに(無意識的に)抵抗感を持つ上司は多いのではないでしょうか。プライドが邪魔をして、必要もないのに上から目線で、「あの案件はどうなってるんだ?」と問い詰めたりします。

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↑上から目線で問い詰めていないだろうか

部下はそれだけで叱られた気になり、都合の悪いことを隠して「いま頑張ってやってるところです・・・」などとお茶をにごす。そして後日、深刻化したところで事態が明るみに・・・といったことも起こりかねません。

質問する側(弱い立場)に立つことを受け入れ、相手に耳を傾ける態度で「あの案件で何か気になっていることはある?」と問いかけたなら、まったく別の展開になるのではないでしょうか。

組織心理学の第一人者、エドガー・H・シャイン教授(マサチューセッツ工科大学名誉教授)によれば、良好な人間関係を築くカギは「謙虚に問いかけること」。「謙虚(humble)」とは、あえて自らを弱い立場におき、相手を立てる態度を意味します。

謙虚に問いかけることができるかどうかで、相手との関係は大きく変わりますし、職場で良い人間関係が築かれているかどうかは、組織全体にしばしば大きな影響をもたらします。

米国の数々の有名企業のコンサルティングをしてきたシャイン教授は、石油流出や飛行機墜落といった重大な事故の背景には、必ずと言っていいほど現場の従業員と上層部の間にコミュニケーションの問題があったと述べています。

日々、人との関わりの中で仕事をしているビジネスパーソン、特にマネジャーやリーダーは、良い人間関係をつくることに意識的な努力をしなければなりません。

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↑エドガー・H・シャイン、マサチューセッツ工科大学名誉教授
photo © Relational Coordination Research Collaborative

では、良い人間関係のカギとされる「謙虚に問いかける」とは何でしょうか。シャイン教授は著書『問いかける技術――確かな人間関係と優れた組織をつくる』の中で、問いかけを以下の4種に区別して説明しています。

  • 診断的な問いかけ・・・相手の特定の事柄に焦点を絞って質問する。会話の主導権を自分が握り、しばしば相手の思考を妨げてしまう。「どんな気持ちで顧客にそのような対応をしたのですか?」
  • 対決的な問いかけ・・・質問する形を取りつつ、自分の考えを伝える。会話の主導権は自分が握り、自分の目的を遂げるためにする質問。「そんな対応のままで良いと思っているんですか?」
  • プロセス指向の問いかけ・・・会話の中身よりもプロセスに焦点をずらして質問する。行き詰まった状況を打開するのに有効。「どのような経緯でこれまでの対応がとられたのでしょうか?」
  • 謙虚な問いかけ・・・自分が知らないということを認め、できるだけ偏見を持たずに、相手が本当に気にかけていることを喋りやすくする。「今の状況について教えてくれますか?」「何が必要でしょうか?」

もちろん、現実に仕事や生活のさまざまな場面で直面する「問いかけ」は多種多様で、この4種のうち複数の要素が絡み合うもの(対決的にプロセスについて質問する、など)もあり得るようですが、このような区別を頭の片隅に置いておくと、自分が「質問する側」に立ったとき、今よりも上手に問いかけることができるのではないでしょうか。

普段、自分がよく喋る方だと感じられる方は、もっと人の話を聞くこと、そのために「謙虚に問いかける」ことを意識してみるといいかもしれません。

 

参考:エドガー・H・シャイン著『問いかける技術――確かな人間関係と優れた組織をつくる』
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