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「話す力」より、ずっと大切な「問いかける技術」――自分をあえて弱い立場においてみよう

仕事でも、プライベートでも、相手の話をよく聞かずに自分ばかり喋っていたら、うまくいきませんよね。

自分が話すだけでなく、相手に話してもらい、その声に耳を傾けるには、上手に「問いかける」ことが求められます。これは簡単なようで、意外に難しいことです。なぜでしょうか。

社会学的な見方によると、「質問する側」は、「質問される側」よりも心理的に弱い立場に身を置くことになるのだそうです。質問とは、それに対する回答を「お願いする」ことだからかもしれません。

たとえば、部下に質問することに(無意識的に)抵抗感を持つ上司は多いのではないでしょうか。プライドが邪魔をして、必要もないのに上から目線で、「あの案件はどうなってるんだ?」と問い詰めたりします。

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↑上から目線で問い詰めていないだろうか

部下はそれだけで叱られた気になり、都合の悪いことを隠して「いま頑張ってやってるところです・・・」などとお茶をにごす。そして後日、深刻化したところで事態が明るみに・・・といったことも起こりかねません。

質問する側(弱い立場)に立つことを受け入れ、相手に耳を傾ける態度で「あの案件で何か気になっていることはある?」と問いかけたなら、まったく別の展開になるのではないでしょうか。

組織心理学の第一人者、エドガー・H・シャイン教授(マサチューセッツ工科大学名誉教授)によれば、良好な人間関係を築くカギは「謙虚に問いかけること」。「謙虚(humble)」とは、あえて自らを弱い立場におき、相手を立てる態度を意味します。

謙虚に問いかけることができるかどうかで、相手との関係は大きく変わりますし、職場で良い人間関係が築かれているかどうかは、組織全体にしばしば大きな影響をもたらします。

米国の数々の有名企業のコンサルティングをしてきたシャイン教授は、石油流出や飛行機墜落といった重大な事故の背景には、必ずと言っていいほど現場の従業員と上層部の間にコミュニケーションの問題があったと述べています。

日々、人との関わりの中で仕事をしているビジネスパーソン、特にマネジャーやリーダーは、良い人間関係をつくることに意識的な努力をしなければなりません。

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↑エドガー・H・シャイン、マサチューセッツ工科大学名誉教授
photo © Relational Coordination Research Collaborative

では、良い人間関係のカギとされる「謙虚に問いかける」とは何でしょうか。シャイン教授は著書『問いかける技術――確かな人間関係と優れた組織をつくる』の中で、問いかけを以下の4種に区別して説明しています。

  • 診断的な問いかけ・・・相手の特定の事柄に焦点を絞って質問する。会話の主導権を自分が握り、しばしば相手の思考を妨げてしまう。「どんな気持ちで顧客にそのような対応をしたのですか?」
  • 対決的な問いかけ・・・質問する形を取りつつ、自分の考えを伝える。会話の主導権は自分が握り、自分の目的を遂げるためにする質問。「そんな対応のままで良いと思っているんですか?」
  • プロセス指向の問いかけ・・・会話の中身よりもプロセスに焦点をずらして質問する。行き詰まった状況を打開するのに有効。「どのような経緯でこれまでの対応がとられたのでしょうか?」
  • 謙虚な問いかけ・・・自分が知らないということを認め、できるだけ偏見を持たずに、相手が本当に気にかけていることを喋りやすくする。「今の状況について教えてくれますか?」「何が必要でしょうか?」

もちろん、現実に仕事や生活のさまざまな場面で直面する「問いかけ」は多種多様で、この4種のうち複数の要素が絡み合うもの(対決的にプロセスについて質問する、など)もあり得るようですが、このような区別を頭の片隅に置いておくと、自分が「質問する側」に立ったとき、今よりも上手に問いかけることができるのではないでしょうか。

普段、自分がよく喋る方だと感じられる方は、もっと人の話を聞くこと、そのために「謙虚に問いかける」ことを意識してみるといいかもしれません。

 

参考:エドガー・H・シャイン著『問いかける技術――確かな人間関係と優れた組織をつくる』
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