ブルー・セーター――引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語
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ストーリー

なぜ世界には、こんなに大きな溝があるのだろう?

子供のころにジャクリーン(「私」)がエド叔父さんからもらった青いセーターは、着古して中古店に売ったあと海をわたり、10年後にアフリカの貧しい少年のもとへ届いていた――。世界はつながり合っている。ある国で起きたことが、別の国の、思いもよらない所に影響を及ぼす。しかし一方で世界には、想像を絶するほどの貧富の差がある。・・・

幼いころから世界の貧富の差の問題に関心を持っていたジャクリーンの夢は“世界を変えること”。アルバイトをしながら大学を卒業し、しばらくは休暇をとって将来を考えようと思っていたが、両親にすすめられ、しぶしぶ銀行の就職面接を受ける。
「銀行で働きたいわけではないんです。世界を変えたいんです」
「うちの仕事をすれば、銀行業務だけでなく世界をまわることができますよ」
「ほんとうですか?」
「ほんとうです」
「・・・では、この面接を最初からやり直しても構わないでしょうか?」

運よくチェースマンハッタン銀行に就職したジャクリーン。すぐに海外を飛び回って貸付審査の仕事をするようになる。刺激的で充実した毎日。しかし、ブラジルのリオデジャネイロで運命が変わる。貧しいストリートチルドレンに出会ったのだ。社会から“のけ者”にされた彼らの境遇を思い、銀行内で低所得者層向けの貸出を主張したところ、上司は相手にしてくれず、次第に対立してしまう。上司は言った。
「ジャクリーン、そうカリカリするな。きみもそのうち銀行文化になじむだろう」

決して銀行文化に染まるまいと決意したジャクリーンは、低所得者層向けの金融、マイクロファイナンスについて調べ、開発途上国で活動するある非営利団体に注目する。大銀行から非営利団体への転職にはためらいもあったが、使命感を持って活躍している女性代表に憧れ、手紙を送って嘆願、ついに団体への参画を認められる。銀行に辞表を出して、25歳のジャクリーンは人生の舵を大きく切った。


何も知らずにアフリカへ・・・想像を超えた冒険の幕開け

ブラジルでのプロジェクトを希望していたが、派遣先はアフリカ。ケニアからコートジボワールへ向かい、アフリカ開発銀行の中にオフィスを持つ。使命は現地の行政機関の立ち上げだ。――しかし、勢い込んで行ったジャクリーンを待ち受けていたのは、冷淡な上司アイシャと、露骨に嫌悪感を示すアフリカ女性たちだった。どうしていいかわからないジャクリーンに、親切な女性が助言する。「あの女性たちには気をつけなさい。呪われたくないでしょう? 部屋に十字架はある? キリストに祈りなさい」・・・

なじめない文化、なかなか上達しないフランス語、意地の悪い上司、そして最初の手痛い挫折。「こんなことのために私は将来有望だった銀行のキャリアを手放したの?」・・・一時はひどく落ち込むジャクリーンだったが、気を取り直して新たな仕事に挑戦する。先行きが見えなくなっていたとき、ルワンダの家族社会問題省の公務員、ベロニクからの誘いがあった。「ルワンダで低所得の女性向けの金融機関を創りたいの。手伝ってくれないかしら」――これこそ自分のしたい仕事だと喜び、ジャクリーンは美しい“千の丘の国”ルワンダに向かった。


貧しい人のための銀行と“ブルー・ベーカリー”誕生!

ルワンダでは女性の権利が十分に認められていない。ベロニクの依頼を受けてジャクリーンは、地元のソーシャルワーカーのオノラータ、ルワンダ初の女性国会議員であるプルーデンス、アニエス、コンスタンスと協力し、女性のための貸付機関の設立に乗り出す。「女性を支援することが家族を支援することになる」「寄付ではなく貸付をすることが真の自立支援になる」――この信念のもと、周囲の懐疑的な声をはねのけ、新しい金融機関“ドゥテリンベレ”が発足した。「熱意を持って前進する」という意味を持つこの団体は、着実に顧客を増やし、女性たちの“起業家的取り組みによる自立”を支援する存在として名を広めていく。

その一方で、オノラータに案内された貧困地区ニャミランボでジャクリーンは、無気力な未亡人女性の活動グループに出会う。そこは先進国からの援助によって行われている、赤字垂れ流しの“パン製造プロジェクト”の拠点だった。唖然として、「援助と手を切るなら、これがビジネスとして成り立つように協力します」と女性たちに申し出たジャクリーン。リーダーのプリスカが目を輝かせた。

20人ほどの、物静かで自分に自信のない女性たちとの“起業”が始まった。人と目を合わせることさえ苦手な彼女たちに手を焼きながらも、“自らの努力で生活を改善する”取り組みは少しずつ前進する。ジャクリーン自身も、人々に耳を傾け、共感的な態度で物事を進めることを学んでいく。やがてプロジェクトは、それまでの配達だけでなく店舗を構えるまでに発展。新たな出発を祝うため、ジャクリーンと女性たちは古い建物を青のペンキで塗って店舗にした。ニャミランボの“ブルー・ベーカリー”。それは、機会があれば人はだれでも大きな潜在力を発揮できることを証明する存在となった。


新しい“ファンド”の構想、ルワンダ虐殺の衝撃・・・

アフリカ大陸での活躍の後、経営の勉強をするためスタンフォード大学に入ったジャクリーン。そこで人生の師ジョン・ガードナーと運命的な出会いをする。「国内の活動にも目を向けてみるべきだ」。師に勧められて卒業後にロックフェラー財団に入ったジャクリーンは、国内外のさまざまな問題の現場を知り、世界を変えるために何が必要なのかを考え続ける日々を過ごす。世界を変えていくには新しいタイプのリーダーシップが必要だと考え、次世代リーダー育成プログラムを開始。国内外での研修を計画する。

その一方でジャクリーンは、まったく新しい“ファンド(基金)”の存在が必要だという考えを持つに至った。慈善事業やフィランソロピーではなく、一般のビジネスでもない、その両者の性格を併せ持った資本。長期的な展望に立って現地の起業家を支援していく“忍耐強い資本”が必要なのだ。ジャクリーンはのちに“アキュメン・ファンド”と名付けられる機関の構想を膨らませていく。

1994年4月、衝撃的な知らせが飛び込んできた。ルワンダで民族間の対立から大量虐殺が発生した――。100日間で80万人もの人々が殺されたという大惨事の衝撃にジャクリーンは絶句する。ドゥテリンベレはどうなったのか。ブルー・ベーカリーはどうなったのか。オノラータは、プルーデンスは、アニエスは、リリアンは?・・・恐怖と混乱を抱えたまま、ジャクリーンはルワンダに戻る。――

CONTENTS

プロローグ
第1章 何も知らずに海外へ
第2章 外見は鳥のように、内面は虎のように
第3章 文脈がものを言う
第4章 かごの経済学と政治的現実
第5章 ブルー・ベーカリー
第6章 暗闇の中のダンス
第7章 行程表のない旅
第8章 新しい学習曲線
第9章 道についたブルーのペンキ
第10章 報いと復活
第11章 沈黙の代償
第12章 機関がかぎを握る
第13章 忍耐強い資本
第14章 レンガを一つひとつ積み上げて
第15章 規模を拡大する
第16章 夢見る世界、ともに創り出す未来


『ブルー・セーター』と似たテーマの英治出版の本

『国をつくるという仕事』:貧困解消をめざして闘いつづけた23年間。元世界銀行副総裁・西水美恵子氏が、農村の貧民から将軍や国王に至るまで、「国づくり」の現場で出会ったリーダーたちの姿を情感込めて綴った回想記。

『世界を変えるデザイン』:世界の90%の人々の生活を大きく改善する「ものづくり」とは? 夢を追うデザイナーや建築家、エンジニアや起業家たちのアイデアと良心から生まれたデザイン・イノベーション実例集。

『グラミンフォンという奇跡』:アジア・アフリカにおける携帯電話事業の急速な広がりを、バングラデシュの「グラミンフォン」の事例を軸に描いたビジネス・ドキュメンタリー。BOPビジネスと経済開発のリアルな姿がわかる一冊。

『アフリカ 動きだす9億人市場』:いま急成長している巨大市場アフリカ。数々の問題の裏にビジネスチャンスがあり、各国の企業や投資家、起業家が続々とこの大陸に向かっている! 豊富なケーススタディからグローバル経済の明日が見えてくる。

『ネクスト・マーケット』:世界40億人の貧困層=ボトム・オブ・ザ・ピラミッド(BOP)が巨大市場になる! C・K・プラハラードが構想10年をかけ、骨太の理論と豊富なケーススタディで世界経済の未来を示したベストセラー。

『チョコレートの真実』:世界で最も愛されるお菓子・チョコレート。その甘さの裏には、苦い真実がある。カカオ生産現場で横行する児童労働の実態や、企業・政府の腐敗など、今なお続く「哀しみの歴史」を描いたノンフィクション。

『誰が世界を変えるのか』:すべては一人の一歩から始まる! 犯罪を激減させた“ボストンの奇跡”、HIV/AIDSとの闘い、共感教育、失業・貧困対策……それぞれの夢の軌跡から、コミュニティを、ビジネスを、世界を変える方法が見えてくる。

『いつか、すべての子供たちに』:21歳の女子大学生が始めた教育改革ムーブメント! 若者を貧困地域の学校に派遣し大きな成果を上げている巨大な非営利組織「ティーチ・フォー・アメリカ」。その立ち上げから拡大までを描いた、波乱万丈の青春ストーリー。

フージーズ 難民の少年サッカーチームと小さな町の物語

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